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絆消費のゆくえ

2011年を表す漢字は「絆」と発表(日本漢字能力検定協会)された。東日本大震災の後、日本人が絆の問題に敏感になったのは事実のようだ。職場(三菱総合研究所)の同僚の阿部淳一は震災後の6月に全国3万人アンケート調査を行い、絆志向の台頭を分析している。成果の一部は、私が編集に携わっている『フロネシスNo.6消費のニューノーマル』(三菱総合研究所制作、丸善プラネット発行)に掲載してもらった。ここではまず、それを私なりにアレンジしながら紹介しよう。

阿部は、社会心理学者のシュワルツが整理した「安心」「快楽主義」「普遍主義」など10の価値観に、日本人ならではの「帰属意識」を加えた11の価値観について調べた。現在の評価とともに、震災前後に変化があったかどうかを聞いたのである。それぞれの結果を、高い順に並べると次のようになる。

【現在の価値観】
1安心 2快楽主義 3適合 4個人の自立 5帰属意識 6普遍主義 7慈善 8伝統 9達成 10刺激 11権力
【震災前より強まった価値観】
1安心 2帰属意識 3普遍主義 4慈善 5快楽主義 6適合 7個人の自立 8伝統 9達成 10刺激 11権力

「安心」は両方とも高く1位、「伝統」「達成」「刺激」「権力」は両方とも低く8位~11位である。注目すべきは、2位から7位の価値観である。「帰属意識」「普遍主義」「慈善」が震災前より強まった価値観として2位~4位に台頭している。これを阿部は「絆志向の台頭」と分析する。ちなみに価値観の高低は、具体的には次のような項目に「そう思う」と答えた人の割合で算出される。

帰属意識:家族との信頼関係やふれあいを大切にしたい/近所の人とのふれあいを大切にしたい
普遍主義:自分ひとりの幸せよりもみんなの幸せを考えたい/自然や地球環境を大切にしたい
慈善:周囲の人を助けたい、面倒をみたい/他人が必要としていることに対応したい

私の身近でも、震災後のボランティアにかけつけた人がいるし、家族の絆に目覚めた人がいる。震災後、結婚相談サービスの相談が急増し、婚約指輪の売れ行きが増えたというニュースを読んだときは、最初出来すぎた話だと思ったが、職場の同僚のTさんが仙台に転勤中の彼氏との結婚を決めたのを知り実感したものだ。また、幼馴染のIくんは最近、下関で暮らす80歳過ぎの実の父親と義母の面倒を見るために東京を去ることを決意した。もともと小学生のときに下関から転校してきたから帰郷と言えなくはないし、独身中年だから身軽ではある。しかしそうはいっても、40年以上にわたる東京の生活拠点を捨てて、職のアテもなく帰郷するのだ。重い決断である。

さて、こうした絆志向は消費にどんな影響を与えるのだろうか。今日はクリスマスイブだが、最近のメディアの報道によれば、クリスマスと年末年始商戦で「絆」が注目されている。絆消費とは、家族や友人と時間を過ごすことを重視した消費であろう。まず、よく言われるのは、外出するより家で過ごす志向が強まったということだ。某デパートの顧客調査によるとクリスマスでは「家飲み」と答えた人が80%だったという。「デパ地下」などの食品の宅配も好調のようだ。おせちの予約が好調だとか、鍋セットや家族で行うゲームの売れ行きがよいとも言われている。

もちろん絆消費は家(自宅)の中と決まっているわけではない。ホームパーティ用の「料理人出張サービス」が好調という記事では、東京のマンションで「友人同士のパパやママ、子どもたち約30人が集まり忘年会を開催」という事例が紹介されていた(日経新聞2011年12月20日)。場所は書いていなかったが、30人だからどこかの会場を借りたのであろう。あるいは、共有のパーティスペースを持った大規模マンションだろうか。また、年末年始の首都圏のホテル予約状況が好調で、家族や親せきで泊る人が多いという記事もあった。たとえばホテルニューオータニ幕張では、首都圏に住む祖父母を連れた3世代での家族利用が特に増えている。年末年始の国内旅行も好調で、JTBは、自粛ムードの反動の他、親族や友人とのつながりを深めるため旅行する人が増えると見る(日経新聞2011年12月17日)。

これらの記事で私が面白いと思ったのは、昔ながらの核家族の絆消費とはちょっと様相が違うところだ。もともとクリスマスと年末年始は昔から家に人が集まりやすいし、家族や親せきが集まりやすい。特に、小さな子どものいる核家族で、クリスマスや年末年始にはお父さんが家にいるといった程度の話なら、昔からある風景だ。しかし、そうした典型的な核家族の風景だけでなく、家族、隣人、親族、友人など、とにかく気の置けない仲間たちが集まって楽しむ様々な絆消費のパターンが出てきたのではないだろうか。

この時期だからということに限らず、日本人の絆の変わらない点、変わった点をもう少していねいに見ていきたい。絆消費はこれからのマーケティングの最重要なテーマである。
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