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U字カーブを目指して

年齢と幸福にはどんな関係があるのだろうか。「あなたは幸福ですか」というアンケート調査の結果を年齢別に集計してみれば、年齢と幸福度の関係をある程度実証的に確かめることができる。諸外国の調査では、幸福度はU字カーブを描くという結果が多いらしい。つまり若いころは幸福度が高く、中年に及んで低くなり、老人になるほどまた高くなる。なるほど中年期には若い時の多くの夢を諦めざるを得ないし、義務や束縛が多い。リタイアが見え始めてからのほうが人生を楽しめるのかもしれない。ところが日本の代表的な幸福度調査の「国民生活選好度調査」では年齢が高くなっても幸福度は高まらない。U字でなくL字に近いカーブになっているという(『平成20年国民生活白書』の分析による)。

もっとも、こういう違いは本当に年齢だけによるものなのか、世代の違いもあるのではないかという疑問が必ず残る。特に日本のように第二次大戦を境に国民のライフスタイルや価値観の大きく変わった国では、現在の高齢者と戦後生まれの今後の高齢者とではいろいろな点で違いが出てくるであろう。

いずれにせよL字カーブではさびしい。どうしたらU字にできるのだろうか。そこで次に幸福の決定要因について見てみよう。平成21年度国民生活選好度調査の「幸福度を判断する際の重視する項目」を見ると、年をとるほど「健康」を重視するという人が増える。ちなみに全体平均でも「健康」は1位で、以下「家族」、「家計」、「自由時間」、「就業」、「友人」、「生きがい」、「職場」、「地域」と続く。しかし5歳階級別に見ると、「健康」が1位に上がってくるのは40代後半からだ。10代後半から20代前半までは「友人」や「自由時間」、20代後半から40代前半までは「家計」や「家族」が1位になっている。年をとるほど健康が重視されてくるという結果は、おそらく世代や国民性にかかわらずあてはまる結果であろう。

老いて健康であることは、個人の幸福にとって望ましいだけでなく、社会的コストの観点からも望ましい。日本のような超高齢社会では医療費・介護費が財政圧迫の大きな要因になるからだ。そこで、老いて健康であるための方法は、個人の幸福論としても、社会的幸福論としても重要なテーマだ。もしよい方法があるのなら、政府や役所は税金を投入してでも積極的に取り組むべきであろう。

ここで注目したいのは、老人医療費と高齢者就業者率の相関だ。「平成19年版厚生労働白書」によると、高齢者就業率(70歳以上人口のうちの就業者数の割合)が高い都道府県では1人当たり老人医療費が低いという相関関係がある。これで見ると、高齢者就業率が1位の長野県は老人医療費が最下位である。高齢者就業率が最下位に近い北海道、大阪、福岡、沖縄などの老人医療費は高めになっている。

稲葉陽二・藤原佳典の研究(注)によれば、この相関は市町村で調べても成り立つ。65歳以上の就業率が高い市町村ほど、1人当たり老人医療費が低い。高齢者就業率1%ポイントの上昇が、1人当たり医療費6014円の減少と対応するという。1人当たり老人医療費は全国平均(2005年)で821千円だから、これは全体の0.7%に相当する。

健康だから働けるのか、働くから健康になるのかは微妙なところだ。しかし働いていたほうが体によいのは事実だろう。70代半ばになる私の母親は、古くからの友人との関係のほか、孫(妹の末娘)の世話、ボランティアや自治会の活動、週1回の区民公共施設貸出の管理人などをやりながら上手く自分の居場所を作っている。この中で、収入のある管理人業務が思いのほか楽しいらしい。お小遣い程度にしかならない収入で、一種のプチ就業に過ぎないのだが、やはり「働く」ということの格別の重みがあるのだと思う。「やるべきことがあるってのは有り難い」というのが最近の口癖だ。

注)行動計量学第37巻第1号、稲葉陽二・藤原佳典「少子高齢化時代におけるソーシャル・キャピタルの政策的意義―高齢者医療費の視点からの試論」
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jbhmk/37/1/39/_pdf/-char/ja/
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