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泥船に乗った気分で?

昔から「床屋談義」のネタは政治と経済が多い。景気がどうなるかは万人の関心事だ。ただ、政府に何ができるのかという期待感には、あきらめムードのほうが強くなっている気がする。さらに、たとえ日本の景気が良くなったとしても、自分の景気が良くなるとは限らない。このへんの一体感も薄れているのではないだろうか。

「日本企業の「稼ぐ力」への評価が市場で高まっている」。今日の日経新聞(2015年2月13日)トップ記事冒頭の一文だ。7年7カ月ぶりの高値をつけた日経平均株価を報じたものである。

「稼ぐ力」は、アベノミクスの成長戦略のキーワードだ。昨年に閣議決定された『日本再興戦略』改定版には、「日本の稼ぐ力を取り戻す」という歯切れのいい文言が登場する。

しかし「日本の稼ぐ力」ではなく、日経新聞のように、「日本企業の稼ぐ力」と主語を明確にしてくれると、事態はとたんに明確になる。問題は、日本企業が強くなることと、自分の稼ぎが良くなること、やる気が出たり、将来に希望を持ったりすることが、必ずしもイコールではないことだ。

古い話をするけれども、日本は戦争に負けてスッカラカンになり、とにかく経済を立て直す必要があった。そんな時代、1960年(昭和35年)に閣議決定された『国民所得倍増計画』には、日本人全体としての素直な一体感が感じられる。「計画の目的」という部分を引用しよう。

「国民所得倍増計画は、速やかに国民総生産を倍増して、雇用の増大による完全雇用の達成をはかり、国民の生活水準を大巾に引き上げることを目的とす るものでなければならない。この場合とくに農業と非農業間、大企業と中小企業間、地域相互間ならびに所得階層間に存在する生活上および所得上の格差の是正につとめ、もつて国民経済と国民生活の均衡ある発展を期さなければならない。」

この文章には、迷いがない。「国民」という言葉の中に、日本企業と日本人、大企業と中小企業、都会と田舎が一体に溶け込んでいる。少なくとも起草者はそれを心から信じているようである。その背景にあるのは、やはり当時の日本の貧しさであったのだと思う。

やがて日本は「東洋の奇跡」と呼ばれる高度経済成長を達成し、石油ショックの後も安定成長を遂げ、1980年代には「バブル景気」の時代になる。

ところが1990年代以降は一転、低成長とデフレの時代が続く。実はこの時代に政府は注目すべき長期計画を出している。1992年(平成4年)に閣議決定された『生活大国5か年計画―地球社会との共存をめざして―』だ。表題からは「経済大国から生活大国へ」というようなメッセージ性が伺える。

しかし閣議決定された本文を読んでみると、何とも歯切れが悪い。「経済ではこれ以上稼げない」というあきらめと、「十分に稼いだのだから違うことを目指そう」という余裕のようなものがミックスされていて、モゴモゴしているのである。作成者の苦心はわかるのだが、これでは一般の人の琴線には響かないだろう。

そこへいくと、今回のアベノミクスの『日本再興戦略』は、何を言いたいのかはるかに明確である。しかし、『国民所得倍増計画』とは時代背景が違う。ここに難しさがある。

貧乏から立ち上がるための「所得倍増」に下品さは感じられない。実は高度成長の過程でエコノミック・アニマルと呼ばれたこともあるのだが、人間、底辺から立ち上がっていくためには、どこかで「なりふりかまわず」のアニマル・マインドが必要だ。そこには「野生の気品」があるとさえ言ってよい。

ただし、今の日本に同じことは言えない。国民的一体感を「稼ぐ力」だけでひっぱるのは無理がある。

たとえば、本当に個人で稼ぐ力、イノベーション力のある人は、そもそも税金が高くて既得権力が残存し、高齢化の進む日本という「泥船」に見切りをつけるかもしれない。海外移住、である。脱税に走るグローバル企業と同じ心境だ。実際、そういう価値観の若い人はいるし、そういう発言が相応に人気を博することもある。

結局、政府が音頭をとるという方式自体に限界がある。そんな時代になったのだと思う。

政府には最低限のことだけ期待するのが正しいのだろう。身近な仲間や共同体づくりが出発点。それを重ね合わせた先に、国のあるべき姿がある。最終的にどんな姿になるのか、やってみるまではわからない。

国境に意味はないという人がいる。国境の垣根が低くなり、ネットワークで世界がつながる。それは歓迎すべきことだと私も思う。しかし、どこかの土地で生活を営むという人間の基本的な姿は変わらないだろう。

タヌキさんを置いて、華麗に木の船に飛び移るウサギさんのような才覚はないし。

かちかち3



◆参考
『国民所得倍増計画』 1960年(昭和35年)に閣議決定
https://rnavi.ndl.go.jp/politics/entry/bib01354.php
『生活大国5か年計画』 1992年(平成4年)閣議決定
http://www.ipss.go.jp/publication/j/shiryou/no.13/data/shiryou/souron/10.pdf
『日本再興戦略』改定版 2014年(平成26年)閣議決定
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/


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